地下水管理と住民の取り組み

2 市水道の概要と浄水場の現状

宇治市における給水は、購入している「府営水」(琵琶湖―天ヶ瀬ダム水)と市内6カ所の「自己水」(地下水)でまかなわれている。1日の給水能力は95300トン。内訳は、府営水62800トンと自己水32500トンで、その比率は約2:1である。市は、自己水比率三分の一確保を基本方針としている。

その概要は資料1の通りである。

<資料1> 「市議会建設水道常任委員会資料」平成18年12月21日
File0016.PDF

現在市水道部が、廃止・休止・統合等を検討対象にしているのは、市内全域の6浄水場のうち5浄水場である。市水道部は、給水に問題はないが、地下水(原水)の汚染が進行しているとして、次のように述べている。

<資料2> 「宇治市水道部における地下水汚染対策について」(平成18年11月7日)

 1 開浄水場

平成17年度の水質は、原水でトリクロロエチレンが最大値0.092mg/L、平均値0.054mg/Lと環境基準値0.03mg/Lを超過している。テトラクロロエチレンは最大値0.011mg/L、平均値0.007 mg/Lで、最大値で環境基準値の0.01 mg/Lを超過している。給水では基準値をクリアしているが、原水で環境基準値を超過している状況から、18年度に廃止の検討に入り、19年度の早い時期に廃止の決定を行う。

2 槙島浄水場

平成17年度の水質は、原水でテトラクロロエチレンが平均値で0.003 mg/Lで環境基準値の三分の一程度検出。シス1・2ジクロロエチレンが微量検出。給水では基準値をクリアしているが、原水は6浄水場の中でも水質の悪化が進んでおり、平成18年度中に休止措置を行う。

3 神明浄水場・奥広野浄水場

両浄水場とも、今後、水質悪化の進行が懸念される。両浄水場の統合も含め検討を進める。

4 西小倉浄水場  

水質悪化が進んでいるが、当面現行の運転を継続する。施設内に府営水道5,000m3 の受水機能があるので、水質悪化が進行することになれば、直ちに府営水の利用を検討し対処する。

5 宇治浄水場  存 続

※傍点は筆者

この資料には、廃止・休止対象の1、2の「開」「槙島浄水場」の原水については、環境基準値を超える物質名と数値を明記しているが、3、4の浄水場については、水質悪化の進行としか書かれていない。また5については、存続とだけ記載があるだけである。

しかし筆者が10数年間のデータを、市情報公開制度により入手した水質検査結果(原水)からみると、4「西小倉浄水場」においては、テトラクロロエチレン、鉄及びその化合物、マンガン及びその化合物で、環境基準値を超える数値が検出。全く触れられていない5「宇治浄水場」でも、四塩化炭素やトリクロロエチレンが検出され、マンガン及びその化合物が、10年間継続して環境基準値を超え、一般細菌や大腸菌郡も数年間検出されている(基準値は「検出されないこと」)。水質悪化を理由に、統合対象になっている3「神明浄水場、奥広野浄水場」の原水は、環境基準値を超える数値は全く見あたらない。

さらに対象の浄水場の廃止・休止後切り替えるとしている「府営水」においても、一般細菌、大腸菌郡、色度、濁度が10年間継続して環境基準値を超えている。また給水において、発ガン性の一つの指標である「総トリハロメタン」値が、他の浄水場に比べ高いなど問題点がある。(住民説明会でこの事実を指摘。市水道部は10年間のデータを公開、この事実を認めた。)

以上のことからみれば、市水道部は「市民に安心・安全の水を供給する立場を最優先に、府営水へのシフト替えをさらに進めることが必要と考えられる」としているが、「水質」を問題として、浄水場の廃止・休止・統合を検討しているのではないことが推測される。

さらにいえば、当初から開、槙島の浄水場廃止・休止ありきから考えているふしがある。

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